ボークンの話し
新島は昔から漁の盛んなところで、海にまつわる不思議な話しがあります。
古老の話に漁師はよく「ボークン」に出会うことがあるといいます。
この「ボークン」は海坊主と同じものだとか、海で亡くなった人の亡霊だとか言われるが、たいていは船の
舳先のほうから上がり顔を見せず背を向けたまま現れるそうです。 そして蓑を着てるようだといいます。
昔、さざえを採って江戸に積み出していた頃のの話しで、その頃さざえ採りは寒中に潜り二月の下旬から
三月にかけて江戸に積み出していました。
寒のうちに潜って採ったさざえを潮溜まりに生かしておきワラの大スカリに茶碗程もある大さざえを
二百五十ほど入れ、漁船一隻に二十スカリ、五千個積んで江戸に向けて漕ぎ出します。
このスカリを日に三度づつ海に下ろして汐を含ませ、夜昼かけて江戸に持ち込む
のだそうで、三月の節句には三十艘ちかくも乗り出したこともあったと伝えられています。
寒のうちから三月の海は荒い。
辛い仕事ではあるが江戸見たさ、金欲しさの欲と二人ずれ、仲間と組んでの例年の初仕事でした。
さて、初めての江戸積み出しのときは航海の安全を祈り、
船が沖合いに出た所で海の法界衆、酒、団子、お饌米にお線香を供え祀るものだといいます。
ある日、この祀り事をしていると「ボークン」が船に上がり込んできました。
そこに供えてあった酒や肴を食べると「帰りにはまた寄るぞー」と言い残し海に帰って行きました。
帰りの航海、漁師達はいつ「ボークン」が現れるかと怯えながら行きに出会った近くに来ると、
海に酒樽や食い物、果ては着物など色々な物が浮いていました。
漁師達は今までの恐ろしさも忘れ夢中でそれらの品物を船に拾い上げ、喜んで村に帰りました。
後でボークンの約束事はこの事だったのかと話し合ったそうです。
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