新島の民話 大三様の天狗(その1)
治郎叔父の話です。
四月の中ば過ぎ、陽気も暖かくなって山の緑は萌えるような若葉になっていた。
そんなある日の昼下がり、そろそろイカ釣りの始まる頃なので、ハネ竿を伐りに大三山の
オダイカンに向かいました。
仲間三人分で一人に二本あればと六本伐り、もと来た道を帰ろうとしましたが、
どうしてももと来た道に出る事が出来ません。
歩いても歩いても元道に出られないのです。
時々、大道に出たような気がして自動車のタイヤの跡もあったりするのですが解りません。
山の中を上がったり、下がったり歩き回っています。
木の間から村の屋根も見えたりしたが、自分のいる場所が解らない。
保育園と高校の屋根もボンヤリとわかっているのだがー。
伐った竿六本を肩に担いだり引っ張ったりしながらどれだけ山の中を歩いた事だろう。
ふと、我に返って気が付いたときは、もう夕方近かった。
着ていたシャツはあちこち破れています。
一体自分はどうなっていたんだろう。
帰り道、自分ながら不思議な事もあるもんだなあと思いながら
昔の年寄りがヨベームンだの、山の若い衆の話をしたが、
嘘じゃないなあと考えながら家まで帰って来たそうです。
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